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シネマ1987online

赤目四十八瀧心中未遂

死出の旅路の男女を濃密に

人生に絶望し、尼崎に流れ着いた元エリートの生島(大西滝次郎)は焼き鳥屋の女主人・勢子の世話で毎日、臓物をさばき、もつにくしを刺して暮らしている。その生島の前に、同じアパートに住む女・綾が現れる。綾にひかれた生島は「この世の外へ連れてって」という一言に誘われて死出の旅路へと向かい、赤目四十八瀧を登っていく。

昨年度の映画賞を総なめにした作品。昨今のさっぱりした映画と違い、濃密である。描き方が油っぽく、2時間40分はかなりきつい。しかし、その独特の世界観は他の作品を圧倒する。尼崎に住む底辺の人々、生島の疎外感、綾のかれんさ…。

寺島しのぶの体当たりの演技が素晴らしい。大楠道代や内田裕也らの演技も個性的で存在感がある。映像は尼崎の吹きだまりの雰囲気をうまくとらえているほか、後半の赤目四十八瀧の映像美が圧巻だ。決して見やすい映画ではないが、一見の価値はある。(2004年7月29日・酒井)

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