殺人の追憶
実際の事件を基にした傑作
傑作である。「シュリ」「JSA」など多くの韓国映画が公開されてきたが、私はこれらの作品に対してまじめであるが少々古臭く、大げさなイメージを抱いていた。しかしこの作品はまったく違う。サスペンス映画の名作「羊たちの沈黙」をもしのぐ素晴らしい出来栄えである。
どこがそれほど素晴らしいのか。それはち密な脚本を基にすべての場面が映像で表現されていることである。1986年のソウル近郊の農村。若い女性の裸の死体が発見され、その後も同じ手口の殺人事件が続く。捜査する刑事たちは、やがて心理的に追い詰められていく。そして有力な容疑者を見つけるが…。
実際に起きた未解決の連続殺人事件が基となっている。映画はコミカルなタッチで進行するが、殺人事件が重なるにつれて、観客は映画に引きこまれていく。事件が起きた韓国の時代背景を映し出しており、その重苦しく息苦しい雰囲気が見事に表現されている。(2004年9月16日・酒井)