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シネマ1987online

赤い月

激動の時代の日本人を描写

中国を侵略してから終戦までの日本人の姿が描かれる。外地に取り残された人々はどのようにして日本に帰ったのか。当時五歳だった私にはぼんやりとした記憶しかないが、それをくっきり突き出されたようで、涙があふれた。

画面いっぱいに映る赤い月は激動の時代を強く物語る。主人公の森田波子(常盤貴子)は自分の運命を誰のせいにもしない。「私は生きたいのです。生きて子供たちを生かしたいのです」。波子の利己的と思える強さは美しい。

同じ時代を生き延びた日本人には思い出したくない映像かもしれない。しかし年月は流れ、この時代を知る人々は少なくなった。中国から祖国に帰った日本人も、祖国を踏みにじられた中国人も歴史の中に消えようとしている今、この映像は見ておくべきだろう。降旗康男監督以下スタッフの情熱で、原作者のなかにし礼にも満足できる作品になったと思う。(2004年10月28日・林田)

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