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シネマ1987online

父と暮せば

戦争の痛み呼び覚ます

広島の原爆で生き残ったことに負い目を感じている美津江(宮沢りえ)は原爆の資料を収集している学者の木下(浅野忠信)と出会う。二人は互いにひかれ合うが、美津江は自分の恋心をかたくなに抑え込む。そこへ原爆で死んだ彼女の父・竹造(原田芳雄)が幽霊となって現れ、“恋の応援団長"となって心を開かせようとする。

昨年、県文化賞を受賞した黒木和雄監督の新作。前作「美しい夏キリシマ」は戦争の悲惨さをテーマにしながらも監督の少年期の体験を交え、ほのぼのとした部分がある作品だった。今回は戦争に反対する強い意志が直接的に伝わってくる。

この作品は私たちが忘れかけている「戦争の痛み」の記憶を鮮明に呼び覚ます。そしてこの「痛み」こそ、今の日本人が忘れてはならないと監督は訴える。監督の強い意志がひしひしと伝わってくる作品だが、一方で犠牲になった人たちへの優しいまなざしも忘れていない。(2004年11月18日・酒井)

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