誰も知らない
母に捨てられた4人の子供たち
父親の違う4人の子供たちが母と暮らしている。戸籍はない。母親は「人に見られると一緒に暮らせなくなる」と外へ出ないよう約束させている。ある日、クリスマスには戻るから、と母は出て行き、子供たちだけの生活が始まる。
12歳の長男(カンヌ映画祭主演男優賞の柳楽優弥)は懸命に弟妹の世話をするが、少年らしい明るい瞳は生活が荒れるに従い、暗い光をたたえた大人の瞳へと変わる。何があっても彼は泣かない。生きていかねばならないから。そのたびに瞳にあきらめの色が宿る。
クリスマスに母は戻らずサンタの奇跡も起こらない。どんなに約束を破られても彼らは母を愛している。サンタを信じているように母のことも信じている。
ラストに救いはない。しかし子供たちの強い生命力、こちらを見上げる純粋な瞳と差し出される手が静かに胸を打ち、彼らの後ろ姿をこのままずっと見守っていたいと心から思った。(2004年12月2日・手塚)