解夏(げげ)
失明の不安と恋人への思い
視力を失っていく苦しみとはどのようなものなのか。主人公の隆之は医者からベーチェット病で視力を失うと告げられる。隆之は恋人と別れ、実家の長崎に帰り、視力を失う前に故郷を心に刻み込もうとする。しかし別れた恋人が現れ、「失明後は隆之の目になっていきたい」と告げる。
長崎を舞台にした美しくて悲しい物語である。観客に生きる勇気と喜びも与えてくれる。主人公を演じる大沢たかおは難しい役をうまく演じているが、女優陣にはもう少し真に迫った演技がほしかった気もする。
監督の磯村一路は主人公の失明に対する不安や苦しみ、そして恋人への思いを繊細に表現している。それでいて作品が暗くならない点は評価できるが、主人公がやがて失う光をどれだけうまく表現できたかは疑問も残る。傑作と言えるほどの出来ではないが、見逃すにはもったいない作品である。それにしてもこの映画、長崎をPRしすぎでは。(2004年2月5日・酒井) p>