ロング・エンゲージメント
不明の婚約者を探すミステリー
「アメリ」の監督ジャン=ピエール・ジュネの新作は、第一次世界大戦下、フランスの戦場で行方不明になった婚約者を探す女性マチルド(「アメリ」のオドレイ・トトゥ)の長い旅を描いた愛のミステリーである。原作は「雨の訪問者」「さらば友よ」の脚本でも有名な作家セバスチャン・ジャプリゾの「長い日曜日」。
このロング・ストーリーには張り巡らされた伏線の数々が刺しゅうのようにち密にそして見事に編みこまれている。戦後になって戦場の真実を追求したミステリーとして、深作欣二監督の「軍旗はためく下に」と並ぶ傑作と言えるだろう。特に、悲惨な戦場の暗い色調と平和なパリとブルターニュの明るい色調の対比が効果的で、その撮影(空撮!)は圧巻だ。
ただ、見事に練り上げられた脚本だけに、前半の登場人物紹介をしっかり把握しておかないと、謎解きを楽しめないことは覚悟しておいてほしい。(2005年3月31日・笹原)