五線譜のラブレター De-Lovely
名曲に乗せて描く夫婦愛
「夜も昼も」「ビギン・ザ・ビギン」などの名曲を生んだアメリカを代表する音楽家コール・ポーターの伝記映画。しかし、一筋縄ではいかない伝記映画である。
「君の人生だ、君の音楽で始めよう」と舞台演出家が晩年のポーター(ケビン・クライン)に言って始まる構成にもそれは明らかだが、だから映画が舞台劇調かというとそうでもない。
ポーターと妻リンダ(アシュレイ・ジャッド)の夫婦愛に焦点を絞った音楽映画という感じが強い。ポーターが同性愛者であることも理解して結婚し、彼を支え続けたリンダ。彼女あってこそ彼の音楽もあったのだと思い知らされる。
彼の晴れ舞台の日、彼女は死の病にひんしていた。そこで歌われる「ソー・イン・ラブ」は、それゆえいっそう胸を打つ。その時々のポーターの心情に合わせて彼の名曲の数々が歌われるのは心憎い限りだ。(2005年4月21日・小野)