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シネマ1987online

ヒトラー最期の12日間

後に残るのは戦争の愚かさ

あまりにもヒトラーにそっくりの俳優ブルーノ・ガンツにまず驚かされる。本年度アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた見応えのあるドイツ映画である。

第二次世界大戦でドイツを壊滅させ、ユダヤ人大虐殺を強行した恐怖の独裁者ヒトラー。戦後60年の今、なぜヒトラーなのか? それはヒトラーの近くにいてその最期を目撃した個人秘書ユンゲがすべてを告白したことによる。ヒトラーが愛人エヴァ・ブラウンとともにピストル自殺した直後の側近やその家族、秘書、兵士など今まで語られることのなかった驚きの事実が映像化されていて、それがこの作品を新鮮なものにした。

オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督は非常時における人間の異常な心理状態を実によく表現し、後半思わぬ感動を呼ぶ。しかし、なお、ヒトラーの本心は見抜けない。戦争の愚かさだけが後に残るドキュメンタリーに近い作品である。(2005年10月20日・林田)

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