蝉しぐれ
藤沢周平原作を執念で映画化
江戸時代、東北の小藩・海坂藩が舞台。牧文四郎の父は世継ぎを巡る陰謀に巻き込まれ、切腹させられる。家禄は減らされ、文四郎は母とともに辛苦の日々を過ごすこととなる。変わらぬ態度で接してくれたのは親友の逸平と、隣に住むふくだけだったが、ふくは江戸の屋敷で奉公するため旅立っていく。
数年後、文四郎は筆頭家老から牧家の名誉回復を告げられる。それは父と同じように世継ぎを巡る陰謀に巻き込まれていくことを意味していた。
主演は市川染五郎と木村佳乃、原作は藤沢周平。監督の黒土三男が原作にほれ込み、執念で作り上げた映画である。だが本当に優れた作品になっているのか。ストーリーが素晴らしいため、最後まで退屈せずに見ることはできるが、同じ藤沢周平原作で山田洋次が監督した「たそがれ清兵衛」(2002年)と比較すれば、ずいぶん見劣りする出来栄えとなっている。原作が優れているだけに残念だ。(2005年10月27日・酒井)