この胸いっぱいの愛を

「黄泉がえり」コンビの新作

東京から北九州へ向かう飛行機に乗り合わせた四人の乗客が理由（わけ）あって20年前にタイムスリップする。そこで彼らは後悔してきた過去の出来事をやり直し、心から安らぎを得る。

映画の主人公・比呂志（伊藤英明）は少年時代に好きだった年上の女性和美（ミムラ）を死から救おうと奔走する。この主軸となる話からは「命」というものが与えられたものであるとすれば、最後まであきらめずに生きなければならないということを知らされる。

死んでしまった盲導犬に会えた老婦人、少年時代のささいな過ちを謝罪することができた青年。この二つのエピソードは、ストレートに胸を打ち、涙してしまう。原作の梶尾真治（熊本県在住）と監督の塩田明彦は死者が次々によみがえる「黄泉がえり」（2003年）のコンビ。あまり情報を得ずに見た方が、意表をつく結末をさらに楽しめるかもしれない。（2005年11月10日・杉尾久）