It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

春の雪

丁寧で誠実なラブストーリー

三島由紀夫の「豊饒の海」四部作の第一部「春の雪」の映画化である。古き良き大正ロマンと呼ばれる時代の貴族社会が舞台。貴族たちのぜいたくで気だるい生活が色鮮やかに描かれて興味深い。三島由紀夫は言葉を非常に大事にして小説を書いた。映画でもそれは十分生きている。

現代の日本人の会話では既に死語となった美しい日本語が耳に快く響いて、華やかな上流社会にひととき紛れ込んでしまったかのような錯覚を覚える。行定勳監督が丁寧に誠実に作り上げた豪華なラブストーリーである。

侯爵家の子息を妻夫木聡、伯爵家の令嬢を竹内結子。美男美女の文句なしの配役だが、三島由紀夫の世界を映像化するにはもう一段上の気品と優雅さと演技力が不可欠かなと思う。あまりにも最近使われ過ぎているスターだけに、少し見飽きていて残念である。物語は面白い。続編の映画化を心待ちにしたい作品である。(2005年11月17日・林田)

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