ニュースの天才
報道の在り方を考えさせる作品
ジャーナリストの仕事は社会の出来事を正確に公平に伝えることにある。しかしどこまでが真実で、どこからがわい曲された記事なのか一般市民には分からない。
これは実在のジャーナリストの物語である。米国の最も権威ある政治雑誌「ニュー・リパブリック」の記者スティーブン・グラスは戦争や政治などの大きな記事ではなく、身近な出来事をスキャンダラスに面白く報道することで人気を得たが、その多くはねつ造したスクープ記事だった。
ひとたび栄光を手にした彼はそれを失う恐怖から次々とうそで周りを固めて行く。親しい先輩や友人も彼の人懐っこい性格にだまされるが、それを見抜いて厳しく追及していく編集長が男らしくて素晴らしい。
誰の心にも巣くっている人間の弱さ、ずるさ、それを見過ごしてしまう世の中の甘さを見事に描き出して、正義とは、真のジャーナリズムとは何かを考えさせられる作品である。(2005年2月3日・林田)