クラッシュ
米の銃被害と人種差別描く
今年のアカデミー作品賞受賞作。テーマはアメリカの銃社会と人種差別。物語の中盤までは登場人物たちのいら立ちに少々うんざりだが、後半の展開には驚かされる。
薬物中毒の母を持つ刑事、テレビディレクターと妻、雑貨店経営家族、父を介護中の警官、有能な検事と妻、鍵修理工。彼らは黒人、白人、ペルシャ人、中国人とさまざま。普通の生活を営んでいるが、人種差別があり、深刻な銃被害がある。疑われたくないのに疑われる。我慢の限界が自己の過剰防衛の連鎖になる。
これが本当の米社会なら絶対に住みたくない。しかしそこにも小さな天使が住み、わが身を顧みず他人を助けようとする人たちが住んでいる限り、感謝の涙は人を浄化する。米社会との違いはあれど、私たちも喧騒の中で暮らしている。日常のささやかな幸せを大切にしたいと思わせる作品だ。監督はポール・ハギス。宮崎市で初夏に公開予定。(2006年3月16日・手塚)