嫌われ松子の一生
不運な女 ミュージカル風に
昭和22年に福岡県に生まれた川尻松子は中学教師となるが、窃盗事件の巻き添えで辞職。家を飛び出し、愛を求めて男性遍歴を重ねる。男運に恵まれていない松子はソープ嬢になり、同居中の恋人を殺害して刑務所に服役する。
監督は「下妻物語」の中島哲也、ヒロインの松子は「電車男」でエルメスを演じた中谷美紀。松子に多くの不幸や不運が降りかかるためストーリーは暗いが、ユーモアを交えてメルヘンチックに、時にはミュージカル風にと「下妻物語」のタッチで描いている。
困難な状況でも決してくじけず、一生懸命な松子の姿を独特の表現方法で描き、ほかにはないユニークな作品になった。焦点が明確でしんの通った素晴らしいフィルムに仕上がっている。私たちは「松子ガンバレ、幸せになれ」と応援するが、実は松子によって私たち自身が元気づけられている。見終わった後、温かく優しい気持ちになれる秀作である。(2006年6月15日・酒井)