初恋

３億円事件と少女の恋描く

宮崎あおい主演。彼女はＮＨＫ朝の連続ドラマにも主演している若手有望株の女優だ。

孤独な少女が生き別れになった兄との接点を求めてジャズ喫茶に立ち寄る。そこで初めて仲間を持ち、一人に恋をする。その彼が少女に3億円強奪計画を持ち掛ける。暗い表情をしていた少女が血の通った女性に変わっていくさまを宮崎あおいがとても上手に演じている。物語には1960年代の安保闘争や3億円事件が登場するが、サラッと流される。重要なのは一人の少女の初恋だ。

彼女は孤独だが、誰かに頼りきったりしない。一人で楽しみを見つけ、一人で寂しさに耐え、生きる道を見つける。少女はその恋を経て、生きる強さを得る。

誰かに愛されていた、という記憶はどんなに人を強くさせることか。ただ、そんな思いに気付くには真剣に自分や相手を見つめられるしんの強さが必要。この少女はそんな強さを持った潔い笑顔をしていた。（2006年6月29日・手塚）