ブロークン・フラワーズ
独身中年男の息子を探す旅
アメリカ・インディーズの才人ジム・ジャームッシュ監督の最新作で、独特の話術が楽しめる。
独身を貫く中年男ドン(ビル・マーレイ)のもとに、ある日、差出人不明の手紙が届く。手紙には彼の息子の存在を知らせる内容がつづられていた。ドンは「花束」を持って昔の恋人たちを訪ね歩き、“息子探し”の旅をすることになる。
いついかなる時も黙って無表情のマーレイが実におかしく、監督独自の「だんまり」の話術は健在である。しかも滋味深さを醸し出している。
マーレイが黙してたたずむラストシーンにそれは極まる。彼は息子と思える青年と話を交わすが、直後、暴走族の車と出くわす。車の中には旅の途中で聞いたのと特徴の似た青年の姿があった。もしやこちらが本当の息子なのか。それにしても自分の人生で確実なものはいったい何があったのだろうか―。去来するさまざまな思い。何とも味な幕切れである。(2006年7月13日・小野)