グエムル 漢江の怪物

さらわれた娘命懸けの救出

登場する怪物に、ある種のヒーローでもあったゴジラのような情緒はなく、巨大な口で人間を丸のみにする様は笑ってしまうほどおぞましい。

韓国ソウル市の中心部を流れる漢江に人食い怪物が現れる。パク一家の愛娘ヒョンソがさらわれ、カンドゥ（ソン・ガンホ）、ナミル（パク・ヘイル）、ナムジュ（ペ・ドゥナ）の兄弟と家長のヒボン（ピョン・ヒボン）は命懸けの救出に向かうが、怪物が持っていたウイルスに感染した疑いで隔離されてしまう。

華麗に動く怪物の造形は素晴らしく、在韓米軍が冒頭から絡む展開はスリリング。一家が果敢に怪物に立ち向かう様は痛々しく胸に響く。

手堅く面白い。随所にユーモアがあって深刻過ぎず、怪物の動作も激し過ぎない。非常時にどこか日常的、という緩急は「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督ならではか。では実際おかしな日常に怪物が現れたら？　それに答えたラストシーンにはびっくり。（2006年9月14日・加賀舞）