フラガール
北国の炭鉱町ハワイ目指す
石炭から石油へと燃料が変わりつつある昭和40年。閉山の危機から炭鉱会社が打ち出した策は豊富な温泉を利用したリゾート施設の建設だった。
南国に住むものに北国の寒さは分からない。だから「北国にハワイをつくる」発想など、まゆつばものに思える。しかし、それが仕事は暗い穴の中で過ごし、外は冷たい風が吹きすさぶ炭鉱の町に住む人々が、まるで春を待つような気持ちで目指したものだとしたら? 施設の呼び物として、炭鉱関係者の子女たちによるハワイアンダンスが行われた。フラの講師役に松雪泰子。フラガールたちに蒼井優など。バレエ経験者の彼女のダンスは見応えがある。母親役の富司純子も、渋い演技を見せている。
消え行く炭鉱という影が、施設の成功と対比して作品に深い印象を与えている。寒い町に住む人々の心は常夏の島より熱かった。そしてフラに流れる愛の心は作品をより感動的にしてくれた。(2006年10月12日・手塚)