父親たちの星条旗

米視点で描く硫黄島の激戦

太平洋戦争における硫黄島での激戦を日米双方の視点から描く2部作の第1弾。今回は米国側から描いたものである。

兵士たちが星条旗を島の山頂に今しも立てようとしている1枚の写真。兵士たちは誰で、写真の裏にどんな真実があったのか。星条旗掲揚に手を貸した衛生兵ジョン・ブラッドリー（ライアン・フィリップ）と彼の息子の目線から映画はミステリー的興味も十分に、見る者をぐいぐい引っ張っていく。

島での戦闘の地獄絵図。砲弾が飛び交う時と砲声が途絶えた「間」が恐ろしい。帰国後、ブラッドリーたちは英雄に仕立てられ、戦時国債の宣伝に利用される。「政治」と「戦争」の密なかかわりをここまであらわに描写した映画は初めてだろう。兵士たちは両方にとって捨て駒であり、戦争に真の英雄などはいないのだということが強烈に伝わってくる。クリント・イーストウッド監督がまたしてもすごい作品を撮った。（2006年11月9日・小野）