ゆれる
女性をめぐり相克する兄弟
兄弟のドラマである。都会で写真家として活躍中の弟・猛(オダギリジョー)と、家業を継ぎ、地方の実家で地道に暮らしている兄・稔(香川照之)。猛は母の一周忌のために久しぶりに帰省し、兄と再会する。兄の店では幼なじみの女性・智恵子が働いていた。三人は連れだって峡谷へ出掛けるが、そこで揺れるつり橋から智恵子が転落死する。彼女が落ちたのは事故か、稔が故意に突き落としたのか―。
増村保造監督の「妻は告白する」は登山中、ザイルが切れて男が転落死したのは事故か女の故意によるのかが鍵となる作品だった。本作では同様のミステリー的趣向で一人の女性をめぐって顕在化する兄弟の相克が描かれる。裁判劇となる構成も似ているが、「蛇イチゴ」の西川美和は女性監督らしい繊細さで兄弟の心の「ゆれ」と愛を表出させた。
ラストで稔はバスに乗ったのかどうか。見る者の想像に委ねる幕切れも鮮やかな秀作だ。(2006年11月16日・小野)