マッチポイント

アレン監督の巧みな語り口

ニューヨーカーとして有名なウディ・アレン監督。だが、今度の新作は舞台をロンドンに取り、濃厚な男女のドラマを展開している。

この大都会に住む元プロテニス選手のクリス（ジョナサン・リース・メイヤーズ）は上流階級にあこがれる野心家で、テニスを教えている富豪のトムと親しくなり、ほどなく彼の妹クロエと結婚する。しかしクリスは刺激的なトムの婚約者ノラ（スカーレット・ヨハンソン）に抗しようもなく引かれ、情事におぼれていく。妻とノラの間で揺れ動くクリス。彼はある策略を思い付く―。

人の「運」をテーマにしたラブ・サスペンスの逸品。主人公がドストエフスキーの入門書をひもとくなど伏線の張り方は抜け目ない。主人公が妻と愛人との間で悩む姿はアレン監督の私生活の実体験が反映されたのかもしれない。語り口が巧みで現実感のある恋愛劇。大人の寓話として、酔い心地満点の作品だ。（2006年12月14日・小野）