太陽
昭和天皇苦悩淡々とつづる
「天皇」を真正面から描くことは、日本では一種タブーのようになっている。ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督による本作は、外国人だからこそ成し遂げられた成果かもしれない。
第二次大戦降伏寸前の昭和天皇の姿が淡々とつづられていく作品である。だが、画面の隅々に緊張感がみなぎる。食事のシーン。震える指でオムレツを運ぶ侍従。口にする天皇。戦時中にはぜいたくとはいえ、人と同じものを食べている。食べるものも、手も足も人と同じなのに「神」と呼ばれる者の苦悩。「神の国」は戦争不敗と思われ、降伏を容易に切り出せない状況でのしかかる重圧。これでは生物研究に没頭したくなるのも無理はないと思えてくる。
対等に話をする相手とてなく、自分は愛されていないのではと思う「日出づる国」日本の天皇の孤独も映画からひしひしと伝わってくる。イッセー尾形が天皇を好演。写真撮影でのおどけた姿も印象的だ。(2006年12月28日・小野)