ミュンヘン
スピルバーグの平和への祈り
1972年9月、パレスチナのテロリスト“黒い九月”がミュンヘン・オリンピックのイスラエル選手村を襲撃、選手11人が犠牲となる。イスラエル政府は犠牲者数と同じ11人のパレスチナ幹部暗殺を決め、暗殺チームを組織。リーダーのアブナー(エリック・バナ)は祖国と愛する家族のため幹部を一人一人暗殺していく。
監督のスティーブン・スピルバーグは「宇宙戦争」「ジュラシークパーク」といった娯楽作の一方で「シンドラーのリスト」などシリアスな作品を手掛けており、この映画もその系列にある。
これは米同時多発テロに対するスピルバーグの結論と言える。イスラエルとパレスチナの話を描いているが、報復が新たなテロを生み、平和が訪れないことを映像で表現している。いろいろな要素を盛り込み過ぎたために作品の完成度は高くないが、スピルバーグの「平和に対する祈り」をくみ取っていただきたい。(2006年2月23日・酒井)