パフューム ある人殺しの物語
超人的嗅覚で究極香水探し
18世紀、悪臭漂うパリの魚市場で産み落とされた天才児の物語。名前はグルヌイユ(ベン・ウィショー)といい、超人的な嗅覚を持つ。香水調合師となり、究極の香水を追求するグルヌイユがたどりついた原料は意外なものだった。そして連続殺人事件の幕が上がる。
原作はパトリック・ジュースキントのベストセラー小説で、においが鍵となる作品。それだけに映像化は難しいのではと思えたが、「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ監督はよくぞここまでやり遂げてくれた。
究極の香り探しはグルヌイユにとって至高の「愛」探しである。また鋭い嗅覚を持つのに自分の体臭がない彼には、それが愛される「自分」探しでもあるのだ。クライマックスの大群衆シーンも圧巻。「愛されたい」主人公が驚愕の行動を取るラストまで見事で、スクリーンから甘美であやしい香りが立ち上った。(2007年3月15日・小野)