バッテリー
野球と人生の大切なすべて
抱き締めたくなるような野球映画だ。あさのあつこ原作、滝田洋二郎監督による作品で、往年の名作漫画「キャプテン」に通じる良さがある。
中学生になる天才ピッチャーの原田巧(林遣都)は、引っ越してきた母の故郷で、同級生の豪(山田健太)と出会う。巧の投球にほれ込む豪。二人はバッテリーを組み、野球部に入部する。
前のチームの捕手が受けるのに半年かかった巧の剛速球を豪がわずか5球で捕球する序盤から目頭が熱くなる。病弱の弟に母親の愛情が傾いていることが影響してか、他人に心を閉ざし、クールな巧。女房役となった豪は速球とともに彼のすべてを受け止めてやる。2人の友情が素晴らしく、巧役の林の凜とした表情が実にいい。
野球は「気持ちのスポーツ」だと2人の姿に思わされる。ここには「野球」の、生きる大切なすべてがある。巧の投げる速球が見る者の心のミットにも深くストレートに入り込む。(2007年3月22日・小野)