クィーン
女王を演じるミレンに気品
主人公のエリザベス女王をヘレン・ミレンが演じて、今年のアカデミー賞で主演女優賞を受賞した。
1997年8月31日、ダイアナ元皇太子妃がパリで事故死した。映画はその直後の英国王室の混乱と女王の苦悩を描く。王室の沈黙は当時、世間の非難を浴びたが、一週間後、女王がいかにブレア首相(マイケル・シーン)の進言を聞き入れ、国民に声明を発表したか。それが虚実交えて再現されている。
ロイヤルファミリーや政府首脳の間ではえげつない話が交わされ、週刊誌の暴露記事めいた部分もある。だが、スティーブン・フリアーズ監督の演出と女王役ミレンの気品ある演技が作品の品位を高めている。
城の周辺で女王がシカと出合うシーンがその意味で印象深い。狩りで追い詰められてもすっくと立った美しいシカに女王の姿が重なって見える。彼女の心理変化の転回点となるこの名場面で本作の真価が分かる。(2007年5月10日・小野)