硫黄島からの手紙
優しさ見える日本への視点
「父親たちの星条旗」に続き、硫黄島の戦いを描くクリント・イーストウッド監督作品。一つの戦場を敵味方双方の視点で二本の映画にするという構想にイーストウッドの優しさが見えてくる。キネマ旬報ベストテンで「星条旗」に次ぐ二位となった。
食べ物も水さえもない硫黄島。「日本軍は五日で陥落する」と米軍は予想していたが、総指揮官の栗林忠道中将(渡辺謙)は玉砕を禁じ、徹底抗戦を命じて一カ月以上持ちこたえた。その戦略は当時のアメリカに驚異と尊敬の念を抱かせた。
ハリウッド映画的な描写に多少の違和感はある。しかし、敵国だった日本兵の心をここまで温かく見つめてくれたことに、「ありがとう」と言いたい。確かに日本は愚かな戦争をしてしまったが、「天皇陛下万歳」と叫んでも一人一人の兵士の心は「家族を守りたい」一心だったのだ。二等兵役の二宮和也が素直に好演して涙を誘う。(2007年1月11日・林田)