It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

監督・ばんざい!

自嘲的に監督自身描く

映画監督キタノ・タケシは「ギャング映画は二度と撮らない」と宣言して新しい分野に挑戦する。名匠小津安二郎をまねた人情劇、昭和30年代もの、ホラー、ラブストーリー、時代劇、SFといろいろなジャンルに挑むがうまくいかない。

困り果てたキタノ監督に新しいアイデアがわき起こり、一本の映画に取り掛かる。それは詐欺師の母とその娘が政財界の大物の息子らしき男に財産目当てで接近するというものだった。

もはや日本を代表する映画監督になった北野武の新作。北野監督はこの映画で映画監督としての自分自身を自ちょう的に描く。いわば彼の私映画である。この種の作品ではフェリーニの「8 1/2」やトリュフォーの「アメリカの夜」が有名。これらに匹敵する出来ではないが、北野ワールドを存分に堪能できる。北野作品をよく知っているか、映画通の人でないと十分楽しめないかもしれないが、その毒に当てられるのも一興だろう。(2007年6月14日・酒井)

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