ツォツィ
赤ん坊契機に変わる主人公
タイトルは舞台となる南アフリカの現地語で「不良」のこと。そう呼ばれる少年ツォツィ(プレスリー・チュエニヤハエ)は盗みのためなら人殺しもやる札つきのワルだ。ツォツィはある日、盗んだ車の中から赤ん坊を発見。そこから彼の生き方は変わってくる。
南アフリカ出身のギャヴィン・フッド監督作品。昨年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作だが、主人公がある一つのことを契機に人間性に目覚めていくさまは今年の受賞作「善き人のためのソナタ」とくしくも共通する。
こういうひどい時代だが、いやそうだからこそ、最後は人間の「善」性に賭けてみたいという願いが伝わってくる。それは祈りにも似た悲痛な願いである。本作はそれがよりストレートに打ち出されており、涙させずにはおかない。
歩行のできない老人との対話や赤ん坊の命名場面にラストと、名シーンも多い。本年屈指の秀作である。(2007年8月30日・小野)