ヘンダーソン夫人の贈り物
心を打たれるデンチの名演
邦題は直訳だが、本当は「ヘンダーソン夫人提供」とすべきかもしれない。これを「贈り物」としたのはほほえましい。
実話を基にした映画化である。1937年、大富豪の夫に先立たれたヘンダーソン夫人(ジュディ・デンチ)は遺産の使い道に困り、ロンドンの劇場を買い、米国風ミュージカルを上演する。滑り出しは順調だったが、他の劇場がまねをし始めたためにジリ貧に。起死回生に彼女は女性の裸を舞台で見せる「額縁ショー」を始める。
夫人と支配人のヴァンダム(ボブ・ホスキンス)とのやり取りが痛快だ。第二次大戦で空襲中も上演を続ける夫人には「戦争を甘く見てないか」との厳しい問いかけも。「甘く見てはいないわ」と答える彼女は戦争で最愛の息子を失っていたのだ。悲しみを胸に明るく皆に「贈り物」をしてくれる夫人。デンチの名演に心を打たれる秀作だ。監督はスティーブン・フリアーズ。(2007年12月20日・小野)