それでもボクはやってない
冤罪事件描き裁判制度問う
通勤電車で痴漢と間違えられ、無実の罪に問われた青年が主人公の裁判劇。映画を見ているという感覚が失われ、自分が裁判の傍聴席に座っていると錯覚を起こしてしまいそうな映画である。
「Shall we ダンス?」から11年。待ちに待った周防正行監督の作品だが、従来とはがらりと変わって楽しさはない。ある日突然、冤罪を着せられたとしたらどうなるのだろうか? 「日本の警察は、裁判は、あなたが思っているよりはるかに理不尽なものですよ」と映画は教えてくれる。観客に「真実を貫き通す勇気と粘り強さと判断力を持ち続けることができるか?」と問い掛ける。
実際の痴漢冤罪裁判を報じた記事に目を留めた周防監督が3年以上の取材を重ね、日本の裁判制度の問題点を突く社会派の映画に仕上げた。主役の加瀬亮をはじめ、弁護士役の役所広司、瀬戸朝香、検事役の尾美としのりほか、全員適役で納得できる。(2007年2月15日・林田)