明日への遺言

藤田まことの重厚な演技光る

太平洋戦争において日本軍人として堂々と任務を果たし、戦ってきた岡田資中将が戦争犯罪者として裁かれる裁判を静かに冷静に映し出したドキュメンタリーに近い映像の物語である。

主張すべきことを堂々と主張し、一貫して自分の命を惜しまず、部下たちを救おうとする岡田中将の潔い生き方に涙を禁じ得ない。彼を信じて毎回傍聴席から見守る夫人の清楚（せいそ）な美しさにも涙があふれる。潔い人間とは、果たして今の日本にどれだけいるだろうか？　真実を隠し、罪のなすり合いに奔走するお偉方にもぜひ見ていただきたいものである。監督は黒沢明のもとで長年助監督を務めた小泉堯史。「久遠の平和を願った岡田中将の最後の姿を事実に即し、虚心に描かんとするものです」と彼は語っている。

岡田中将に藤田まこと。重厚な演技が光る。その妻に冨司純子、裁く米国側にも人間らしい優しさを抱かせて感動を呼ぶ。（2008年3月13日・林田）