大いなる陰謀

テロとの戦い息もつかせず

いつもの調子のハリウッド娯楽映画だろうと、軽い気持ちで見ていたのもつかの間、始まると同時にえりを正して見入ってしまった。アメリカが、あたかも沼の中に足を引きずり込まれて行くような、テロとの終わりの見えない戦いがこの映画のテーマである。

若い上院議員トム・クルーズとジャーナリストのメリル・ストリープの会話の駆け引きは息もつけず、観客にも「一緒に考えろ」と難題を突きつけてくるかのよう。アメリカの正義とは何なのか？　政治の裏では何が取引されているのか？　マスコミは何をどう伝える義務があるのか？　わずか92分の上映時間も最近では珍しく、ピリッと引き締まって今までにないメッセージ色の強い作品に仕上がっている。

製作・監督はロバート・レッドフォード。自身も大学教授として登場、監督の正義感を感じ取ることができる。首都ワシントンの美しい街並みとアーリントン墓地の風景が心に残る。（2008年5月8日・林田）