崖の上のポニョ
自然破壊への警鐘を鳴らす
海の底に住むさかなの女の子ポニョ(奈良柚莉愛)は父親の目を盗んで家出し、心優しい男の子・宗介(土井洋輝)と出会う。自然界に住む者と人間界に住む者が心を通わせた時、とてもすてきな奇跡が起こる。
「ハウルの動く城」から4年。宮崎駿が監督したこの作品は話も単純、絵も絵本を見ているような手描きの純朴さで、さりげなく自然破壊への警鐘を鳴らしている。アンデルセンの「人魚姫」であり、ノアの大洪水でもある。
小さい子ども向けではあるが、大人が十分楽しめる。主人公・宗介の母親(山口智子)の強さ、愛情深さには共感する人も多いのではないか。子どもたちと一緒に笑いながら、大人は大人の見方ができる。生物は海から生まれ、月の満ち欠けに生死の影響を受ける。自然界と私たちはつながっている。そんな日常をあらためて気付かせてくれ、見終わった後にさわやかな気持ちが残る秀作である。(2008年8月7日・手塚)