スカイ・クロラ
死なない若者命懸けの戦い
「キルドレ」と呼ばれる不老不死の若者たちを描いた押井守監督の新作アニメである。彼らはこの世界の人々に平和を実感させるため戦闘機で命懸けの空中戦をする。人類が理想とする世界なのに彼らには楽しさのかけらもない。
基地に赴任したパイロットのユーイチ(加瀬亮)は上司のクサナギ(菊池凛子)に引かれていく。そして徐々にキルドレである自分たちの悲しくも切ない宿命に気付くことになる。
押井監督が「攻殻機動隊」「アヴァロン」「イノセンス」などを経てたどり着いたこの映画は究極の永遠(死)の世界に対する問題提起とも取れる。しかしこの無為さを哲学的な命題として描かず、エンターテインメントに昇華している。
傑作「うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー」でも学園祭前日の繰り返しを描いていたから、その延長線上の集大成と言える。若者たちがこの映画をどう見るのか興味深い。(2008年8月14日・笹原)