パコと魔法の絵本
心温まる物語独特の映像美
「下妻物語」「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督の最新作。元は舞台劇らしいが、映画ならではの作品となっている。
変わり者ばかりが入院している病院が舞台。偏屈な老人・大貫(役所広司)はそこで記憶が一日しか持たない少女パコ(アヤカ・ウィルソン)と出会う。大貫は少女のために病院の庭で毎日同じ絵本を読んで聞かせているうち、人間性が変わってくる。そして彼はサマークリスマスの日に絵本の内容を入院仲間とお芝居で演じ、パコに見せてやろうとする。
心温まる物語で、絢爛豪華な色彩による、監督独特の映像美術も健在だ。少女の難病が「博士の愛した数式」以降頻出する設定でまたかと思うのも最初のうちだけ。たちまち「中島ワールド」に引き込まれ、絵本「ガマ王子対ザリガニ魔人」の世界で変人たちがキャラに変化してのVFX映像には拍手喝采。家族そろって見てほしいファンタジーの快作である。(2008年10月2日・小野)