It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

母べえ

胸が熱くなる何げない会話

「武士の一分」から1年、山田洋次監督の最新作。原作は黒澤明監督の記録係だった野上照代の自伝的小説。第二次世界大戦前、戦争反対を訴えた父親が逮捕され、ある家庭に影を落とす。それでも周囲に支えられ、明るく生きる母親と娘たちの姿を描く。

家族の形はそれぞれ。両親がいようがいまいが、そこに愛があれば成り立つものだ。当たり前のことを当たり前に語れなかった時代でも、ちゃぶ台を囲んで毎晩笑い合った家族がいた。それはごく当たり前の風景だったはず。ならば私たちはどうか? とらわれることなく何でも語ることができる。それでも私たちは不自由を感じているのではないか? 人々の愛を、家族の存在を素直に感じられているのか? 

作品中の何げない会話に胸が熱くなる。母親役の吉永小百合が透明感ある演技を見せている。他の出演者たちの存在感もさりげなくて良い。広い世代にぜひ見てほしい秀作だ。(2008年1月31日・手塚)

TOP