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シネマ1987online

トウキョウソナタ

ある家族の崩壊と再生

ある4人家族の物語。黒沢清監督が現代社会のゆがみと再生を的確にとらえた本年屈指の傑作である。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した。

突然リストラされた夫(香川照之)は、威厳を保つために妻(小泉今日子)や子供たちにそのことを言えない。大学生の長男(小柳友)は、無為な日々を過ごすことに反発し、世界平和に貢献したいと行動を起こす。小学六年生の次男(井之脇海)はピアノを習いたいことを言い出せず、内緒でピアノ教室に通い始める。家族それぞれに事件が起こり、少しずつ家庭が崩壊していく。

夫を演じる香川照之が虚勢を張っているのに弱さや不安を隠しきれない人間を見事に演じ、妻の小泉今日子は彼女しか出せない魅力を醸し出していた。また、同級生役の津田寛治の切ない存在感も素晴らしかった。崩壊寸前の家族が再生していく話を最後には感動させてしまう監督の手腕には感服してしまう。(2008年12月11日・笹原)

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