真夏のオリオン
人間的な艦長 玉木宏が熱演
実在した潜水艦をモデルにした池上司の原作「雷撃深度一九・五」を「終戦のローレライ」「亡国のイージス」の福井晴敏が監修・脚色、篠原哲雄が監督した戦争映画。
太平洋戦争末期、日本海軍の潜水艦イ―77が米海軍の侵攻を防ぐため出動する。若き艦長倉本の的確な判断で米軍の輸送艦を撃沈するが、同じく防衛任務に当たっていたイ―81は米軍の駆逐艦パーシバルに撃沈されてしまう。倉本はパーシバルとの戦いに挑む。
倉本は常に乗組員の身を考え、励まし続ける。今までの戦争映画の上官のイメージからはほど遠い人間味あふれる人物として描かれている。倉本に扮する玉木宏は戦時の日本人らしく体重を絞り込んだというやせた体で熱演。酸素が欠乏するギリギリのところまで潜水し、背水の陣で浮上したイ―77、それは8月15日の終戦の日だった。パーシバルの艦長と遠くからの心の交流も見事に描かれ、一見の価値はある。(2009年7月2日・林田)