チェイサー

殺人犯を追う元刑事の執念

韓国で実際に起きた凶悪事件を基にしたクライム・サスペンス映画である。

デリヘルを経営する元刑事ジュンホ（キム・ユンソク）のもとから女たちが相次いで姿を消す。同じころ、街では連続猟奇殺人事件が起こり、人々を震え上がらせていた。女たちの行方を探るジュンホは、客の一人、ヨンミン（ハ・ジョンウ）にたどり着く。ヨンミンは警察に捕まるが、証拠不十分で釈放されてしまう。かくて殺人事件の鍵をも握っているとおぼしいこの男を巡り、元刑事の激しい追走劇が始まる。

警察の制止を振り切って執念深く、いや信念を持って男を追う元刑事の姿が強烈に印象に残る。これが長編初監督作品となるナ・ホンジンの演出はスピード感があって力強く、圧巻だ。残酷描写の点でも、あのサム・ペキンパーも、「セブン」のデヴィッド・フィンチャーでさえも過去の人と思えるほど。映画界に新星誕生の傑作だ。（2009年7月23日・小野）