レスラー
元人気選手の悲哀を静かに
老いてしまった元人気レスラーのランディ(ミッキー・ローク)。大量の薬物で体を維持していたが、試合直後に心臓発作を起こし、医者から「命が惜しければ、リングには立つな」と告げられる。
プロレスは命がけだが、ほとんどのレスラーは大したギャラはもらえず、良い暮らしなど到底できない。それでもリングに上がるのは彼ら彼女らがレスラーだからだ。ランディも倒れて弱気になるが、やはりファンが待つリングへと上がっていく。家庭を持たず、守るものもなければリングで散る。そうできれば本望。なぜなら光輝くリングの上にしか自分の居場所はないから。
ロークが不器用なレスラーの悲哀を静かに表現し、アカデミー主演男優賞に、共演のマリサ・トメイは同助演女優賞にノミネートされた。昨年のヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作。監督は「レクイエム・フォー・ドリーム」のダーレン・アロノフスキー。(2009年8月6日・手塚)