ディア・ドクター
へき地医療の問題点を描く
過疎地の村で医師として地域に貢献してきた伊野(笑福亭鶴瓶)。最近赴任してきた研修医の相馬(瑛太)とベテラン看護師の大竹(余貴美子)、製薬会社の営業マン斎門(香川照之)が村の医療を支えている。住民や患者のかづ子(八千草薫)は伊野と信頼関係にあるが、ある日、伊野が突然失そうしたことで村は大騒ぎになる。
デビュー作「蛇イチゴ」で偽りの家族の破たんとその心理を、第2作「ゆれる」では都会と地方に生きる兄弟の感情のもつれを見事に描き、その鋭く繊細な脚本と共に評価が高い西川美和監督の新作である。軸となる笑福亭鶴瓶と八千草薫の名演技に最後までうならされた。今の日本であえて触れられないへき地医療の現状をさらけ出して問題提起した点でも正当に評価すべき映画だ。
今年の日本映画を代表する傑作「サマーウォーズ」「愛のむきだし」と共に見逃してはならない作品である。(2009年9月3日・笹原)