ガマの油
俳優役所広司初の監督作品
俳優・役所広司が初めて監督し、自ら主演もした作品である。
デイトレーダーで一日億単位の金を稼ぐ拓郎(役所広司)。だが、ある日、一人息子の拓也(瑛太)が交通事故に遭い、意識不明の重体となる。そんな時、拓郎の前で息子の携帯が鳴る。思わず出た彼は電話の声を拓也だと信じて疑わない息子の恋人・光(二階堂ふみ)に、とっさに拓也のふりをしてしまう。
ガマの油売りの口上をウソかマコトか分からないが、マコトであればいい。拓也がもうこの世にいなくなっても、愛する者の存在をマコトと信じ、心に刻みつけておきたい。息子のふりを続ける拓郎と光の二人がそんな気持ちになってくるのが感じられてとてもいい。
ユーモラスで心の温まる映画。あえて言えば、師匠にあたる今村昌平とフェリーニの影響がなくはないが、役所監督の演出力は相当なものと見た。今年の日本映画の間違いない収穫の一本である。(2009年9月10日・小野)