火天の城
木造建築原点 職人の心意気
天正4年。天下統一を目指す織田信長は田舎の宮大工棟梁岡部又右衛門(西田敏行)に安土城築城を命じる。信長の野望を象徴するような七重五層の巨大な天守閣に「私が建ててみせる」と挑む又右衛門。その熱意と信念が人々の心を動かし、襲いかかるさまざまな困難を乗り越えさせていく。
天守を支える柱を敵陣武田側・木曽氏の領土内で調達するエピソードは秀逸。敵の城のために御神木の大ヒノキを渡せるはずなどないのだが、森の番人は命を顧みず、又右衛門に協力を約束する。七重の天守を支えるにはこの大ヒノキこそがふさわしい。敵味方関係なく思いは同じなのだ。
山から切り出した木を運び、皮をはぎ、加工し、図面通りに組み上げていく。気の遠くなるような手作業だ。職人の技術と心意気が見事に描かれ、木造建築の原点をかいま見ることができた。原作は山本兼一の同名小説。監督は田中光敏。(2009年10月29日・のだ)