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シネマ1987online

空気人形

空っぽの体 衝撃的な結末

「私は空気人形。性欲処理の代用品」。ある朝、そんな人形が心を持った。水滴の感触を心地よく感じ、都会の片隅から見える空の光を美しいと思った。街に出た人形はさまざまな人間に出会う。

業田良家の漫画を映画化したのは「歩いても、歩いても」の是枝裕和。主演は「グエムル 漢江の怪物」のペ・ドゥナ。まさに人形のような肢体で大胆に、繊細に空気人形を演じている。

登場人物たちは皆、何かしら孤独を抱えている。老人、老婆、若い女、中年の男と女、それに少女。「私、空っぽなんです」そう話す人形に彼らが言う。僕もそうだ、と。空っぽの体の人形と、空っぽの心を持った人間たちがひととき、心を通じ合う。

人形の恋のエピソードは官能的で切ない。彼女の「人でなしの恋」が、迎える結末は衝撃だ。それでもさわやかな気分にさえなってしまうのは、彼らを見詰める是枝監督の視線が、どこまでも優しいからだろう。(2009年12月3日・手塚)

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