イングロリアス・バスターズ
恐怖と笑いに振り回される
監督は「キル・ビル」の奇才クエンティン・タランティーノ。期待を裏切らない面白さである。今までのナチ映画と少し異なるのはアメリカ特殊部隊によるナチ虐殺の場面があること。やられる側がナチであれば、少々残虐な殺され方であってもそれほどの痛みを感じさせないことがかえって恐ろしい。
舞台はナチスドイツ占領下のフランス。家族を殺され、たった1人草原を走って逃げ延びたユダヤ人美少女ショシャナの復讐劇である。これにバスターズと呼ばれるどこか間抜けた隊長(ブラッド・ピット)率いる特殊部隊が絡み、情け容赦なくナチを殺していく。
恐怖で顔が引きつりながらも思わず笑わせられるという複雑さ。思いも寄らない方向へなだれ込む壮絶なラストシーンはショシャナを演じるメラニー・ロランの美しさがあればこそだ。タランティーノ監督の思いのままに振り回されて大満足の2時間半である。(2009年12月17日・林田)