食堂かたつむり
秀逸なラストセンスが光る
小川糸の同名小説の映画化。東宝映画ヒットの女神(?)、柴咲コウが主演している。
失恋のショックで心因性失声症になった倫子(柴咲コウ)は祖母の死後、スナックを営み、しっくりいかない母親のルリ子(余貴美子)のもとに戻る。そして実家の物置を改装し、小さな食堂をオープンする。客は一日一組だけ、決まったメニューはない。彼女の店はうまくいくのか。
「ザクロカレー」「ジュテームスープ」など彼女の作る料理がユニークでおいしそう。ペットの豚を食材とするか否かという「豚がいた教室」的展開もあるが、母と娘の相克のドラマを軸にした「バベットの晩餐会」風の色彩が濃い。彼女の料理を食べた人は皆、生きる喜びを得、幸せになっていく。その時の人びとの表情が実にいい。
おいしいものを食べて一番幸せにならなければいけないのは…というラストも秀逸。富永まい監督のセンスが光る一編である。(2010年3月11日・小野)