It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

孤高のメス

医療の諸問題指摘する秀作

この映画を見た後は都はるみを聴きたくなる。なぜかは見てのお楽しみ。内容は現職の医師、大鐘稔彦の同名小説が原作の医療ドラマである。

1989年、地方都市の市立病院に赴任した当麻鉄彦(堤真一)。患者を第一に考え、困難な手術も見事に執刀する彼に最初は煙たがっていた同僚の医師やナースも引きつけられていく。そんな時、市長が重病で担ぎ込まれる。命を救うには法律で禁止されている脳死した人体の肝臓移植しかない。当麻は孤独で重大な決断を迫られる。

当麻は名医だが超人ではない。人の命を救いたい一心で普通のことを誠実にこなしていく。それがいかに難しいかがよく分かる。

主人公の当麻を堤が好演。成島出監督の演出も主人公同様に細やか。エンターテインメントでありながら、医師不足や医療ミス、臓器移植など現代の医療の抱える諸問題を精緻に浮き彫りにした見応えある秀作である。(2010年6月17日・小野)

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