プレシャス

ハーレムの実態　深く切り込む

ニューヨーク、ハーレムに住むプレシャスは16歳なのに中学生。彼女は2人目の子どもを身ごもっている。子どもの父親は実の父。母からは毎日罵倒(ばとう)される。彼女は夢をみる。肌の白い恋人、雑誌の表紙を飾り、ほほえむ自分の姿。

ハーレムに10年間住み、読み書きを教えていた原作者が経験をもとに書きあげた本作はハーレムの実態に深く切り込み、社会に大きな衝撃を与えた。そのため米国で多大な影響力を持つオプラ・ウィンフリーが製作に加わり、有名ミュージシャンたちが脇役出演するなど作品を後押しした。

プレシャスには彼女の良さを見いだそうとする大人たちがいた。誰もが愛されている。そう彼女に教えてくれた。何より素晴らしいのは彼女自身で一歩前に踏み出したこと。どんな状況にあっても自分を見失わないで。愛とは?　本当の答えが見つけられるまで。長編2作目のリー・ダニエルズ監督作品。生半可な感動作ではない。(2010年7月22日・手塚)